siztsbの日記

考えていても言葉にできないことを文章にして残しておくことでいつでも読み返せるようにしています。

読了『ホロコースト全証言』

心が痛くなる読書だった。随所に目をそむけたくなるような表記や写真が掲載されているので,読書スピードが落ちてしまい結局読み切るのに1か月ほどかかったと思う。しかし,非常に意味のあるものとなった。

どう考えても起きえないと思われていたことが,欧州で起きてしまった。その元凶はまさしく総統アドルフ・ヒトラー以下ハインリヒ・ヒムラー,アドルフ・アイヒマンらだったけれども,末端での犯罪は一般のドイツ人やドイツ人以外の人々が行った。このことは確かに考えてみれば当たり前のことだ。しかし,現状の薄い歴史の授業ではそこまで深めることができなかった。

また,虐殺のための福祉づくりという点に非常に興味を持った。ドイツは被虐者に対しては徹底的な非人間的な状態を強いたが,加害者に対しては殺人の苦痛からできるだけ遠ざけるような配慮をした。恐ろしいことである。故に,殺人の方法は銃殺や撲殺からガス車,ガス室へと遷移し,効率的殺人工場としてのアウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅収容所の完成へと至るわけである。

アウシュヴィッツダッハウ等の収容所の悲劇はなにもユダヤ人にとどまるものではない。ユダヤ人絶滅政策の前にはナチは精神障碍者を根絶やしにする政策を実行に移し,大勢の同胞を殺戮した。また,国防軍電撃戦を繰り広げた独ソ戦線で捕虜となった赤軍兵も丸腰の内に殺された。防共の名において,国家を守る名において,国民を守るという名において。数百万人が殺されたと,主張している。

本書の素晴らしい点として,各事実の羅列の中に大勢の証言が含まれていることがある。それは,旧来からみられる被害者の証言はもちろんのこと,一般市民,虐殺に加担した人,指導者などさまざまで,立体的にナチスの犯罪に迫れる内容になっている。

虐殺とユダヤ人排斥の精神性については,『ブラックアース』が詳しい。

また,精神病理学的観点からみた囚人の心の動きや,自分自身の感情の変化,体の変化などについては名著『夜と霧』が非常に良かった。

他にも現在読書中の『社会心理学講義』にもホロコーストに関する内容が登場する。こちらは読了したらメモを書こうと思う。今後は『イェルサレムのアイヒマン』,『アウシュヴィッツ強制収容所』,『ニュルンベルク・インタビュー』,『ヒトラーの娘たち』などを読み進め,ナチスの犯罪についてより多面的,立体的な知識を得たいと考えている。