siztsbの日記

インプット・アウトプットのサイクルを回すために書いています。

薬物乱用と適正使用のあいだ『Take Your Pills』

ネットフリックスで配信されている、『Take Your Pills』を見た。興奮剤(覚せい剤)のアンフェタミンメタンフェタミンヒロポン)、メチルフェニデートをめぐるお話。

 

アメリカでは日本と違って覚せい剤アンフェタミンADHD注意欠陥多動性障害)の治療薬として処方されていて、大々的に広告まで打たれている。また、日本でも認可されているメチルフェニデートリタリンコンサータ)と合わせると、市場規模は1兆円を大きく上回るとのことで、製薬会社にとっては大変に大きな市場となっている。

 

ADHDの治療にのみ使われればよいが、学校での成績を上げるためにこれらの薬を乱用(Abuse)する流れがあり、それは依存症を生みだすとともに、多くの成功者を生む。一見矛盾する帰結が面白い。IT企業に勤める男は薬のおかげでいい仕事を得る。使った学生は成績が上がる。一方で、依存症となり薬なしでは動けなくなってしまう者、大量に摂取しなければ生活を維持できない者が映し出されており、薬の威力を思い知らされる。

 

が、同時にこれら興奮剤を摂取したところで実際に能力が向上するわけではなく、「能力が向上した気になる」だけということが重要であると語られる。プラセボ群と実薬群の間に実際に能力の向上に関する有意差は見いだせなかったが、実薬を摂取した群では「より自分はできるんだ」という気持ちになったとのことで、非常に興味深い。

 

根拠の無い自信は人をとても成長させる場合がある。ここぞという場面において自信のあるなしが大きく結果を左右する。発表の場、討論の場、面接の場。色々な場面において、僕たちは自信を必要とする。そんなときに、自分の実力を水増しで評価できるようになる薬があれば、それはそれは幸せなことかもしれない。

 

アメリカでは同時に、オピオイド系鎮痛剤の依存症も大きな社会問題となっており、米国の医療系ニュースや大衆紙では連日この話題ばかりになっている。トランプ氏が言及したことも記憶に新しい。処方鎮痛薬であるオピオイドに依存して壊れていく患者、死亡する患者。1年で3万人以上がオピオイドの過量投与で亡くなっているというから驚くべきことだと思う。分母が違うが、日本人の自殺者数が年間2万人ちょっとなので、それを大きく上回る人がオピオイドで死んでいる。しかも、入り口は処方薬というから、誰も浮かばれない。製薬会社だけが儲かっている構図が、容易に描かれると思う。

 

とんでもない病や癌などの病の帝王みたいなものでなければ、薬である程度は病気をコントロールできる世界に僕たちは行きている。癌すらも慢性疾患になると言われている。すなわち喘息のようにコントロールしながら一生付き合える病気になるということと解釈出来る。

 

薬によって多くの命が救われ、それにより多くの社会的・経済的価値が生み出されていることは重要であるが、同時に薬の重大な副作用により苦しむ人がいる。そのバランスは如何にとるかという議論になる。確率の問題だ。3%の確率で副作用が起こる薬と30%の確率で副作用が起きる薬、どちらを飲むか?という問題になる。

 

数字に落とし込まれて、自分にまさか副作用が起こるはずがない、とか自分は特異体質じゃないから大丈夫。と「根拠の無い自信」を持つ。しかし、起こる人には副作用は起こる。起こってしまったらその人にとっては100%の副作用になってしまう。被害に遭って初めて自分の過信を知る。なんだってそうだ。

 

日本は世界有数の、医薬品審査期間が短い国へと変貌を遂げた。そんな時代にあって、新薬の安全性はより厳重に担保されなくてはならない。社会防衛、社会犠牲のために失われる命は、現代においてあってはならない。僕らはもっと賢い時代に生きていていいはずだ。

 

知っておきたい薬害の教訓―再発防止を願う被害者からの声

知っておきたい薬害の教訓―再発防止を願う被害者からの声

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